半人前霊能者シリーズエピソードZERO 幽霊様のお導き
***

 一日の仕事を終えてゆっくりした足取りで自宅に帰ると、家の前で三神さんが待っていた。

「こんばんは、衣笠先生!」

 眩しくなるような笑みを浮かべながら、しっかりお辞儀をする礼儀正しいところに、彼の実直さを感じた。

「はい、こんばんは」

「昨夜は、ゆっくりと眠ることができました。今朝起きたら部屋の雰囲気も何だか、綺麗になった感じに見えました。まさに驚きの連続です」

(マイナス面の感情に囚われ、怨み辛みを彼女が醸し出していたからね。それを取り除けば必然的に雰囲気が良くなるのは、当然なのだけれど)

「それは良かったです。三神さんの家にいらっしゃった幽霊は、きちんとあの世に送り出しましたので、安心して下さいね」

 魅惑的な笑みに負けないように、ニッコリと微笑んでから家の鍵を差し込んだ。

「あのっ、昨日の返事は……」

 慌てたように、私の背中に向かって声をかけてくる。ここに来た理由のメインが、告白の返事なのかもしれないな。

 口元を綻ばせながら振り返って、三神さんの顔を見上げた。

「4つも年上で行き遅れたオバサンだけど、貴方は後悔しない? しかも霊媒体質なんて、厄介なものを抱えてるけど」

「オバサンなんてとんでもない! まだまだ若いですって。えっと霊媒体質っていうのは、つまり……スギ花粉のアレルギーみたいな感じで考えればいいかと」

 三神さんの言葉に、開いた口が塞がらない。霊媒体質をアレルギーにたとえるなんて、何だか面白いじゃないの。

「そんな風に言われちゃったら、断る理由がないわ。不束者ですが、ヨロシクお願いします」

 吹き出しそうになるのを堪えて右手を差し出すと、大きな手で握手してくれた。

「こ、こちらこそ年下で頼りない男ですが、ヨロシクお願いしますっ!」

「早速なんだけど、これから出かけなきゃならなくて。三上さんのところみたいに安全な場所じゃなく、ちょっと厄介な場所なんです。だから……」

「そうなんですか。そんな危険な場所に、ひとりでお仕事に行かれるんですね。分かりました、お供いたします!」

(は? いきなり何を言いだしているのよ。この人――)

「いえいえ。本当に危ないんですよ三神さん。貴方を連れて行ったりしたら、どうなるか」

 ピュアな人だから、乗っ取られる可能性だってある。なのでなるべく、お荷物は置いていきたい。

「ご一緒させてくださいっ、お願いします。お仕事中は遠くで待機して邪魔にならないように、自分の身は自分で守りますから」

 遠くで待機するって言っても、何だかなぁ。安全っていう保障は、どこにもないのに。

「……まったく、分かりました。そこまで仰るなら、私が貴方の身をお護りします。だから現地では絶対に、勝手な行動を慎んでくださいね」

 渋々承諾すると、ぱあっと笑顔の花が咲いた。本当に嬉しそうだ。

 しかし初めてのデートが、危ない土地の霊査でいいんだろうか? 色気も素っ気もあったもんじゃない。

 だけど――自分以外に護らなければならない者ができたことで、活力が自然と体の中から沸くのが分かった。こうやってどんどん、強くなっていけるのかな。

 玄関に三神さんを待たせておいて、除霊グッズなどを手早くカバンに詰め込んでから一緒に外へ出る。

 彼の存在のお蔭でどんな困難にも負けることなく、仕事を乗り切れる予感がした。

 ――彼女のお導きに感謝しなければ――

 おしまい

 拝読有り難うございます(・∀・)

 半人前霊能者シリーズの本編もよろしくお願いします(*- -)(*_ _)ペコリ
< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

恋の誘導尋問~恋に不器用な先輩に捕われたい~

総文字数/113,767

恋愛(オフィスラブ)110ページ

表紙を見る
表紙を見る
バレないもどかしさが、愛おしくなるとき

総文字数/2,571

恋愛(学園)1ページ

スターツ出版小説投稿サイト合同企画「1話だけ大賞」ベリーズカフェ会場エントリー中

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop