物語は突然に
---転校--
--転校--
「え!転校っ!?」
「そ、転校」
いきなり突拍子のない言葉を聞かされ、あたしは目が点になった。
母さんいわく、急に父親が転勤する事になったらしい。
しかも、その転校する場所の地域は……
「もしかしてあたし達が住む場所って…」
「へぇ?勘がよくなったわね
四年前に住んでた家に戻るって事よ」
うふふ、と手を口元に当てて笑う。
「よかったな夏芽。愛しのキョウくんと家がまた隣になるぞ」
突然後ろから現れてニヤニヤしながら、
あたしの肩に肘を乗っけたこの偉そうな男は冬樹。
あたしの兄貴だ。
キョウ…京っていうのはあたしの幼馴染で
誕生日も血液型も生れた病院も同じだという腐れ縁。
たいていの少女漫画でありがちなキャラ設定だが、そこは突っ込んではいけない。
性格は良く言えば冷静、悪く言えば淡白。
顔は良く言えばクール、悪く言えば無表情な奴だ。
「おい…バカ兄貴。愛しの京クンって何だ愛しの京君ってぇ!」
「7年前に京を嫁に貰う発言した、アホな妹に言ってんだよアホ!」
確かにあたしは七年前…今が十四歳だから、七歳の時に
京を嫁に貰うって言った事はある。
だけどそれは七年前の事で、その時は恋愛感情とかわからなくて
ただ純粋な気持ちで言っただけなんだ!
「そんな昔の事引っ張り出してくるなよ!女々しい男だな!!」
「女々しくて悪かったな!はいはい、夏芽の方が男らしいですよー!!」
兄貴の言葉が終わるか終わらないかのその時、
母さんが思いっきりテーブルを叩いたのだ。
「いい加減にしろ!兄妹げんかは外でやってきな!!」
びっ、綺麗な顔を歪ませた恐ろしい形相で親指を立てドアの方を示す母に
あたし達兄妹はスミマセンと小声で謝る事しか出来なかった。