物語は突然に


「ったく…こえー母親だな……」

「顔がいいだけに迫力あるしね」

場所はかわってあたしの部屋。

兄貴は今あたしのベッドに寝転がって漫画を読んでる。

「引越しか…」

兄貴が憂鬱そうにため息をついた。

「ま、しょうがないよ」

「…わかってる」

また大げさなため息をついて、さっき読んでた漫画の続きを本棚からとる。

「知ってる?ため息つくと幸せが逃げるんだよ?」

「引越しかぁーーーー」

あたしの言葉を受け流して、またも大げさなため息をつく。

自分の兄ながらうっとうしい奴だ、と思いつつパソコンの電源をいれる。

「またネットサーフィンか?」

「うん」

「オタクー」

「うるさい、現代社会において情報収集は必要不可欠なんだよ

それに、アイドルオタクにいわれたくない」

「………」

あたしの言葉に負けて兄貴は無言で漫画のページをめくった。

アイドルオタクの兄貴は自分の部屋の押入れに

アイドルのポスターやらフィギュアやらを隠し持っている。

兄曰く親には知られたくないらしい。

これは私と兄貴、それから兄貴の親友だけの秘密だ。

親には知られたくないらしい兄貴だが、正直うちの親はすでに知っている。

部屋を掃除していた時見てしまったらしい。

その事は勿論兄貴は知らないし、教える必要は無いとあたしは思っている。


「ねー引越しっていつからだっけ?」

「たしか二週間後

母さんが一週間前には荷物をまとめとけって言ってたぞ」

「わかった、ありがと」

二週間。

その期間の間に今通っている中学の友達に別れを告げなければいけない。

正直、別れたくない。

でも引越しして元の家に戻ったら、また昔の友達に会える。

それに京にも会える。

悲しめばいいのか、喜べばいいのかわからなくなった。











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