王子様と野獣
そしてそんな思いも顔に出ているんだろう。美麗さんは私を見て、悲しそうに口の端を曲げた。
「あなたは本当に嘘がつけないわね。信じられない、って顔に出てる」
「……ごめんなさい」
「責めてないわ。うらやましいだけ。……私は、絶対あなたのようにはなれない。……なりたいとも思っていないわ」
自分は自分だと潔く認めて生きる美麗さんは、格好いい。
“美麗ちゃんと百花ちゃん、結構いいコンビになると思うよ”
ああ、遠山さん。そうだったら嬉しいです。
私、美麗さんのこと、結構……いや、かなり好きみたいです。
食後のコーヒーを飲み始め、一息ついたところで美麗さんは話題を変えてきた。
「ところであなた、……瀬川さんのことはどうするの?」
「どうって……」
「いかにもな感じで誘ってきてるけど、主任のことは諦めないんでしょう? 断るの?」
「断るも何も、告白されたわけでもないし、好かれてるなんて思うのも自意識過剰かなって」
「でも気があるのは間違いないんじゃない? なにカマトトぶってるのよ。それくらいはわかるでしょ?」