王子様と野獣
いや、わからない。だって私そんなにもてるわけじゃないし。
黙っていると、意外そうに声を尖らせた。
「……え? なに? わからないもの? あなただって、今までに彼氏とかいたでしょうに?」
「高校のときに、ほんの数週間付き合ったきりで、友達はいても彼氏ってまともにいたことないです。そんな……気があるとかないとか、見ただけでなんてわかるわけないじゃないですか……っ」
「呆れた。それでよく主任を落とすとか言えるわね」
「そこはそれ、決意表明です」
一緒に笑いあうと、美麗さんは椅子を引いて立ち上がった。
「まあ、気をつけなさいよ。瀬川さんは普段冷静だけど、中身は結構熱血よ。強硬手段に出られることもあるかもしれないわよ」
「強硬手段って?」
「襲われちゃったりとか」
私が? ないない。こんな幼児体型なのに。
「隙は見せないほうがいいわよ。ああいう真面目な人ほど、思いつめると怖いんだから」
それを美麗さんが言いますか。
さすがにそれは口には出さず、私は彼女の後について会計へと向かった。