王子様と野獣

「振られたって本当?」

「本当です。あのっ、主任は悪くないので、落ち着いてください。こんなところで騒いだら……」

「だって。振るくらいだったらなんで俺を押しのけてまで、君を送っていったりしたんだよ」

「おいおいー、やーめろって」


軽い調子の声とともに、阿賀野さんがわって入ってくれた。
瀬川さんの腕を掴み、私から引き離してくれる。瀬川さんが顔をしかめたところを見ると、笑っているけど相当の力を込めているのに違いない。


「なーにらしくもなく熱くなってるんだよ」

「放せよ、阿賀野」

「悪目立ちしてるぜ? なんでこんなゴリラ女取り合ってるんだよお前ら」

「ゴリラは余計ですよ」


咄嗟に言い返すと、阿賀野さんはにやりと笑った。


「だってあり得ないだろ、お前がこんなにもてるとか」

「そもそも阿賀野さんのせいですからね! 初日に突拍子もないことしちゃったから、悪目立ちしてるじゃないですか、私」


やがて私と阿賀野さんの言い合いになっていく。
あれれ、なにかがおかしいなと思ったけど、阿賀野さんが目配せしているところを見ると、何か意図がありそう。

< 105 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop