王子様と野獣
7.思い出の君が現れて
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田中本部長について入ったのは、四階の小さな会議室だ。
机が常にコの字型に並べられているここは、少人数の会議のときにすぐに使えるように、この状態でキープされている。
ちょっとした面談をするときにも便利なので、俺もたまに使わせてもらう。
本来、会議室は予約しておかないと使えないが、この部屋は鍵が常に開いているから、割とみんな自由に使っている。
「で、何を騒いでいたんだ、馬場。最近、お前の部署はうるさいぞ。遠山がいなくなった途端にまとまり悪くなったんじゃないか」
「そんなことはありませんよ。落ち着いてないように見えるなら俺のせいです。今後は気を付けます」
ぺこりと頭を下げると妙な圧を感じる。
次の瞬間、ぐっと頭を下に押し付けられ、「うわっ」と思わず声が出た。
「相変わらずいい子ちゃんだな、お前は。……座れよ。ちょっと話があるんだ」
「はあ」
頭から手を離されるとかかっていた重力が消える。本気で体重を乗せてくるのはやめてほしい。
改めて、椅子に座り本部長に向き直る。
この人は、大学時代の俺が学生向けアパートの受付というバイトをしていたときの担当だった人だ。
IT企業から転職してきたばかりだと言い、今はいろんな仕事を経験していると言っていた。
話はおもしろいし、発想も豊かだけれど、実践するときの詰めが甘い。
彼はそんな気質の持ち主で、俺のような石橋をたたいてから渡るようなタイプとは真逆の位置にいたはずだ。
なのになぜか気に入られた。
田中本部長について入ったのは、四階の小さな会議室だ。
机が常にコの字型に並べられているここは、少人数の会議のときにすぐに使えるように、この状態でキープされている。
ちょっとした面談をするときにも便利なので、俺もたまに使わせてもらう。
本来、会議室は予約しておかないと使えないが、この部屋は鍵が常に開いているから、割とみんな自由に使っている。
「で、何を騒いでいたんだ、馬場。最近、お前の部署はうるさいぞ。遠山がいなくなった途端にまとまり悪くなったんじゃないか」
「そんなことはありませんよ。落ち着いてないように見えるなら俺のせいです。今後は気を付けます」
ぺこりと頭を下げると妙な圧を感じる。
次の瞬間、ぐっと頭を下に押し付けられ、「うわっ」と思わず声が出た。
「相変わらずいい子ちゃんだな、お前は。……座れよ。ちょっと話があるんだ」
「はあ」
頭から手を離されるとかかっていた重力が消える。本気で体重を乗せてくるのはやめてほしい。
改めて、椅子に座り本部長に向き直る。
この人は、大学時代の俺が学生向けアパートの受付というバイトをしていたときの担当だった人だ。
IT企業から転職してきたばかりだと言い、今はいろんな仕事を経験していると言っていた。
話はおもしろいし、発想も豊かだけれど、実践するときの詰めが甘い。
彼はそんな気質の持ち主で、俺のような石橋をたたいてから渡るようなタイプとは真逆の位置にいたはずだ。
なのになぜか気に入られた。