王子様と野獣
やや荒れた高校生活も、二年目に入る頃には落ち着いた。
それなりに進学校だったが、課外活動にも力を入れていたので、クラス仲がよかった。
集団をつくると、いつも元気でニコニコして人の注目を集める人間というやつは必ずいる。
そいつを中心としてクラスがまとまっていく中で、俺は参謀という立場に落ち着いた。
決して目立たず、穏やかに笑って求めに応じていれば、居場所がなくなることはない。
できるだけ空気に近い存在になって、生きていたかった。
だけどそれも、父親譲りの金髪が邪魔してくる。
『ハーフなの?』
『金髪、格好いいよねぇ』
決して行動では目立たないはずなのに、女の子たちは俺を見つけ出す。
『浅黄、モテるんだから早く一人に決めちまえよ。でないと俺らに回ってこねぇだろー』
友人のそんな言葉におされて、女の子と付き合ったりもしたけれど、そう長続きはしなかった。
主張の少ない俺といるのは、彼女たちにとって楽しいことではなかったのだろう。
振られたことは傷つくが、引きずるほどつらいわけでもなかった。
そのころの付き合いはいたって健全なものだったし、女の子自体はかわいいと思っていたから、当時の俺は、自分がどうしようもない欠陥を抱えているなんて思っていなかったのだ。