王子様と野獣


「今日、萌は?」

「二十時まではいたんだけどね。幸太くんが来たら一緒に帰るって言って」

「実の兄より懐いているよね」

「浅黄にだって懐いているわよ。あなたが最近来ないからでしょ。幸太くんも寂しがっていたわよ」

「彼女もちをそんなに呼び出すわけにもいかないよ。萌にも自重しろって言ってよ。幸太が優しいからって甘えすぎなんだから」


萌ちゃんは妹ちゃんだよね。幸太くんって人はわからないけど、あさぎくんのお友達なのかな。


「ごめんね、わからない話して」


お母さんが行ってしまうと、あさぎくんは私に向き直る。
そのあとは仕事の話を少しした。やっぱり、今の私とあさぎくんの共通項だからかな。


「私もだいぶ仕事慣れてきましたし、今度美麗さんからもいろいろ教えてもらえることになったんです。頑張りますね」

「うん。今度、皆で一度意見交換をしたいって思っているんだ」


話しているうちに豚丼が来て、一口食べてまた歓声を上げてしまう。
甘辛いタレなんだけど、隠し味にワサビが聞いていて妙にさっぱりしている。今まで食べた豚丼とは一風変わっていて、とてもおいしい。


「これ、父さんのオリジナルなんだ。うまくない?」

「おいしいです! やばいです!」


おなかもずいぶん減ってたし、一気にかっ込んでいたらあさぎくんよりも早く食べ終わってしまった。
それに気づいて、恥ずかしくなる。私って全然女の子らしくない。
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