王子様と野獣
「いらっしゃい」
その時、奥からあさぎくんのお父さんが出てきた。
「父さん」
「やあ、百花ちゃん。また来てくれたんだね」
「はい。とってもおいしいかったです」
「そう? ありがとう。女の子の感想はいいよね。表情豊かで」
ちらりとあさぎくんに視線を送り、あさぎくんの隣に座り、お母さんの持ってきたお替りのお茶を注いでくれる。
ついでにとばかりに、自分もお茶を飲みだした。
金髪で目鼻立ちがくっきりしているあさぎくんと、細い目の和顔のお父さん。
並んでお茶を飲むふたりは見た目は全然似ていないのに、お茶を飲むタイミングとか、湯のみを置くときに、ちょっと傾けるしぐさとかが同じで私はつい、見入ってしまった。
「……なに? モモちゃん」
「あ、ごめんなさい。つい見とれちゃった」
「何が?」
「そっくりだなぁって思って。動き。ふふ」
「え……」
あさぎくんは、動きを止めて一度お父さんに視線を送る。
「そりゃ、ずっと一緒に暮らしてたんだ。似てあたり前だ」
こともなげにそう答えるおじさんに、あさぎくんはほんの少し黙ったあと、すぐにそっぽを向いて何食わぬ声を出した。