王子様と野獣

「……あと一店舗分、うちで持っている土地がある。ここに、低予算で何をつくるのが一番効率的だと思うか、皆の意見を聞きたいんだ」

「そうだなぁ。もう飲食系はいいだろ。あんまり元々ある店舗と競合してもまずい」

瀬川がもっともな意見を言い、阿賀野は思いついたように「じゃあさー」と大きな手ぶりをした。

「レンタルビデオ店とかよくね? 人は娯楽を欲しがるよー」

たしかに商店街には本屋とCDショップはあるけど、レンタルはない。

「悪くはないな」

だけど、大きな駅の近くには割とレンタルショップはある。
笹谷木駅になくとも、会社帰りに借りてくることは可能で、むしろCDショップの利益を下げることにつながるような気もする。

考えていると田中さんがそっと手を挙げた。

「でもこれって、結局今住んでいる方の利便性を上げているだけですよね。それもいつか効果は出ると思いますが、時間がかかるように感じます。駅の活性化という視点で見るならば、これまでこの駅に用事のなかった人もやって来るような……即効性のある企画を考えたほうがよくはありませんか?」

「新規の人が訪れて、そこそこの時間そこに滞在してくれるってこと? イベント系になるよね。……イベントスペースにするには狭いかな。通りに並んでいるから、埋もれてしまう可能性もあるし」
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