王子様と野獣

モモちゃんが商店街店舗一覧を確認し始めた。俺も、手元の資料をもう一度確認する。
生活に直結していると店と直結していないお店とがある。スーパーやドラックストアは必要に駆られて人は入る。逆に、手芸店とか呉服店とか花屋とかは、それに興味のある人間しか来ないだろう。


「あの……屋外型で想定すれば狭いかもしれませんけど、屋内型の体験スペースにすればどうですか? ハンドメイドイベントとか。商店街に手芸店とか花屋さんとかありますよね。そういうところが週末に持ち回りで体験コーナーを運営するとか」

言い出したのはモモちゃんだ。

「ハンドメイドとか製作体験ってある程度人は入るし、滞在時間が長いんです。長くいればそれだけ飲食店に入る機会も増えるし、恋人同士で来た場合に、待っている人間が街をふらつく可能性だって出てくるんじゃないかと」

「ハンドメイドか」

それは俺には思いつかないような案で、考慮する価値はあるように思えた。
けれど瀬川や阿賀野はピンとこないようで、瀬川なんかは右手でボールペンを回転させながら唇を尖らせている。

「ハンドメイドって具体的にどういうことをするの?」

「いろいろですよ。手芸店とかだったら今はやりのレジンとか。花屋さんだったら、リース作りとか。呉服店に協力してもらって七夕に浴衣着付を学ぶようなイベントをしたっていいと思います」
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