王子様と野獣

モモちゃんはだいぶ乗り気のようで、身を乗り出して説明する。田中さんも後押しするように口添えした。

「ハンドメイドは今人気あるわよね。フリマで売りたいっていう主婦の方とか、結構いるそうですよ」

「そんな素人が作るもん、売れるのかよ」

「一点ものですからね。個性があって面白いですよ。私もフリマサイトとかを眺めますけど、出来も結構いいですもん」

「はー。それは知らなかったなぁ」

さすがは田中さんだ。彼女のひと言は悪いけどモモちゃんの発言よりも効果がある。阿賀野や瀬川の顔が真剣味を帯びていくのがわかった。

「確かに商店街の店舗が主催するとなれば、後々のリピーターもつくかも知れない。活性化支援としてはいい案だと思う。ちなみにこの中でイベントができそうな業種ってどれかな。手芸屋以外で」


俺の質問に、すぐさま答えたのはモモちゃんだ。普段、仕事に関しては自信がなさそうなことのほうが多いのに、今は生き生きと発言している。もしかしたら彼女は、こういう企画の仕事のほうが向いているのかもしれない。


「やれる方がいるかどうかはまた別ですけど。二つの業種をコラボしてやってもらうとかはどうですか? 本屋さんと文房具店でブックカバーやしおりをつくるイベントとか。スーパーとか酒屋さんだったら、お酒に合うつまみの作り方とか、商店街の店舗同士の交流にもなるし。いろんな企画が考えられそう」

「……詳しいね、仲道さん」

「あ、前の職場が工芸店で。体験イベントみたいなのをよくしていたんですよ」

意外な返答に驚く。前職ではHPの担当をしていたというから、普通の企業を想像していたけれど、そんな業種だったのか。

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