王子様と野獣

具体的なモモちゃんの提案に、阿賀野も瀬川もイメージがつかめたようで、急に乗り気になってくる。

「いいんじゃん。にぎわいそうじゃん。最初はうまくいかなくてもさ、商店街の店舗同士に交流が生まれるのはいい気がする。商店街全体の活性化にもなるしな」

「客とも仲良くなってくれれば、口コミで広がっていく。下手な宣伝よりよっぽど集客率はあがるな」

方向性が決まっただけで、ふたりとも生き生きとしてくる。やはり女性陣の意見を聞いてみてよかった。

「いいね。可能性が広がってきた。瀬川、試算出してもらえるか。阿賀野は企画書を書いてみて」

「書くのはいいけど、ゴリラ借りていい? いろいろアイディア出てきそうじゃん」

「迷いもなくゴリラって言わないでくださいよ!」

「そうだな。女の子に失礼だぞ、阿賀野」

「はいはい。じゃあ、百花。お前も企画のほうに入れよ」

「えっ……」

まさかの呼び捨てに、モモちゃんが固まる。
ちょっと待てよ。ゴリラと呼ぶなとは言ったけれど、いきなり名前を呼び捨てってどうなんだ。
俺だってそんな呼び方していないのに。

「呼び捨てにするなよ。仕事中だぞ?」

ムッとして続けると阿賀野はにやりと笑う。

「お前こそ余裕ないな。仕事中なのに。……いいじゃん。どうせふたりのときはお前らだって名前で呼び合ってるくせに」

「そんなことしませんよー!!」

冷やかしにかかる阿賀野に、モモちゃんはアワアワしながらも果敢に食い下がっていく。
これは慌てれば慌てるほど阿賀野の思うつぼな気がしてきた。ここは一度、仕切り直しだ。
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