王子様と野獣
そう言って無邪気に男物の服を持ってくる。
他にも、洗面台の歯ブラシやシェービングローションなど、部屋中に散らばる男の気配。
弟とはいえ、男だろ?
こっちは無性にイライラさせられてるって言うのに、俺が手を出さないと分かっているからなのか、モモちゃんは安心しきった笑顔だ。
彼女のシャンプーの香り、タオルもシーツもそこかしこから彼女の香りのする部屋。
ああなんで、こんな理性を試されるような状態になっているんだろう。
「じゃあ、おやすみなさい。あさぎくん」
素直にベッドに潜り、しばらくモゾモゾとしていたかと思うとやがて寝息が聞こえてくる。
眠れるはずのない俺は、大きなため息を一つついて半身を起こした。
モモちゃん、君は一つ、勘違いをしている。
俺は確かに女性を抱けないと言ったけれど、だからと言って性欲がないわけじゃない。
好きな人と一緒にいれば欲情だってする。ただ、その欲求が最後まで続くかがわからないから、怖くて手が出せないだけの話で。
ベッドに横たわるなだらかな曲線。
眠る彼女を、上から眺める。
そんな、安心しきった顔で眠るなよ。
どうしたらいいのかわからなくなる。
瀬川や阿賀野が君に触れると、胸の奥がざわざわする。
俺のものなのに、と思うくせに、手を出す勇気さえもてない。
本当は君の髪の一筋さえ、余すところなく触れてみたいのに。
「モモちゃん……」
眠る彼女の柔らかい唇に、そっとキスをした。
彼女は何か違和感を覚えたのか、眉をキュッと寄せたかと思うと寝がえりを打つ。
もっと触れたいと願う気持ちが、ジワリと沸き上がる。
淡いのに消えることのない、欲望の光。
これが怖さに勝つ日は、遠くない気がしている。
君となら、俺は変われるんだろうか。
他にも、洗面台の歯ブラシやシェービングローションなど、部屋中に散らばる男の気配。
弟とはいえ、男だろ?
こっちは無性にイライラさせられてるって言うのに、俺が手を出さないと分かっているからなのか、モモちゃんは安心しきった笑顔だ。
彼女のシャンプーの香り、タオルもシーツもそこかしこから彼女の香りのする部屋。
ああなんで、こんな理性を試されるような状態になっているんだろう。
「じゃあ、おやすみなさい。あさぎくん」
素直にベッドに潜り、しばらくモゾモゾとしていたかと思うとやがて寝息が聞こえてくる。
眠れるはずのない俺は、大きなため息を一つついて半身を起こした。
モモちゃん、君は一つ、勘違いをしている。
俺は確かに女性を抱けないと言ったけれど、だからと言って性欲がないわけじゃない。
好きな人と一緒にいれば欲情だってする。ただ、その欲求が最後まで続くかがわからないから、怖くて手が出せないだけの話で。
ベッドに横たわるなだらかな曲線。
眠る彼女を、上から眺める。
そんな、安心しきった顔で眠るなよ。
どうしたらいいのかわからなくなる。
瀬川や阿賀野が君に触れると、胸の奥がざわざわする。
俺のものなのに、と思うくせに、手を出す勇気さえもてない。
本当は君の髪の一筋さえ、余すところなく触れてみたいのに。
「モモちゃん……」
眠る彼女の柔らかい唇に、そっとキスをした。
彼女は何か違和感を覚えたのか、眉をキュッと寄せたかと思うと寝がえりを打つ。
もっと触れたいと願う気持ちが、ジワリと沸き上がる。
淡いのに消えることのない、欲望の光。
これが怖さに勝つ日は、遠くない気がしている。
君となら、俺は変われるんだろうか。