王子様と野獣
やがて、目の前の彼女はうとうととし始めた。

「モモちゃん、眠い?」

「や、だいじょーぶです。ちょっと、昨日着る服で悩んで」

寝不足です。と続ける彼女。
デートにそれくらい気合を入れてくれたと思えば嬉しくて、ゆっくり寝かせてあげようと、お姫様抱っこをしてベッドまで運ぶ。

「……んー」

半覚醒状態の彼女に、「鍵、鞄から探すね」と一応断りを入れて、鞄の中を探る。
と、背中から服を引っ張られた。寝ぼけたままのモモちゃんが、俺の服を掴んでいるのだ。

「帰らない……で。……ね。一緒に……」

「モモちゃん?」

「起きても、ここにいて」

寝ぼけたまま、すがるような瞳を向けられて、カッと頭に血が上る。
だからそう、どうして無邪気にそんなことを言うんだ。モモちゃんは無意識でも、こっちは理性が飛びそうになる。

衝動を抑えることができずに、おでこに、頬に、口づける。
くすぐったそうに身をよじる彼女の唇を舌でそっとなぞると、彼女からは普段聞かないような甘い声がでた。

「ん……あ」

「モモちゃん、好きだよ」

もっと、もっと、その声を聞きたい。
胸に手をのばし、その頂をそっと撫でると、彼女の息遣いが少しばかり荒くなる。

「……モモちゃ……」

めちゃくちゃに、したい。
そう思うのと同時に、父の姿が脳裏に浮かんだ。
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