王子様と野獣
「……俺は心配してるだけ。モモはこの通り単純だし。昔のいい記憶だけ覚えていて、あっさり恋に落ちたんじゃないかと思って。あれから何年たってると思ってる? こんなイケメンがフリーでいるなんてことまずありえないじゃん。モモが単純だからって遊ばれるんじゃ困るんだよ」
どうやら、千利の中では、あさぎくんがずいぶん遊び人のように映っているようだ。
全然違うのに。千利こそ、あさぎくんのこと知りもしないで失礼なことばかり言ってる。
カッとなって、私は千利の頬を軽くたたいた。
そういう反撃が来ると予想していなかったのか、千利は頬を押さえカッと頬を赤くした。
「千利は、あさぎくんの何を知ってるって言うの?」
「なっ」
「何も知らないで、思い込みで嫌っているのは千利のほうでしょ。私、今、あさぎくんと同じ会社にいるの。真面目で、優しい人だよ。千利が思い込んでいるような人じゃない」
「俺は心配してるんだよ。モモって思い込み激しいじゃん。……こいつのこと、王子様って言ってたかと思ったら、それからずっと彼氏もつくらずにさ。俺はずっとわからなかった。たった一日会っただけの人間をどうしてそんな風に思えるわけ? そんなの、本当の恋愛なわけないじゃん」