王子様と野獣
「わ、分かるもん。あさぎくんはお母さんとふたり暮らしで育って、お母さん想いの優しい男の子に育った。おじさんとは顔は似てなくても、仕草とかそっくりだよ。それって、おじさんと一緒に過ごしてたからでしょう? 金髪なんて関係ない。アメリカ人のお父さんは今のあさぎくんの見た目しか作ってない。人間の細胞って毎日入れ替わるって何かで読んだよ。だったら今のあさぎくんは、今のお父さんとお母さんと萌ちゃんとの暮らしで作られたあさぎくんでしょう?」
あさぎくんの動きが完全に止まった。それに勇気づけられて、さらに続けた。
「私は、あさぎくんの金髪も、控えめなその性格も好きだよ。今のあさぎくんを見ていたらお父さんと同じことをするなんて思えないよ。もっと、自分のこと信じてよ。私は、今のあさぎくんを信用してるし、大好きだもん」
「……モモちゃん」
私を見つめるあさぎくんの目は、潤んでいた。
金髪だからなに?
お父さんがお母さんを捨てたからって、あさぎくんがそんなことするはずないでしょう?
怯えないで。ちゃんと自分自身を見て。
あさぎくんはいつだって優しかった。大切な人を守りたくて自分を殺してしまうほど、優しい人なんだよ。