王子様と野獣

「だとしたらそれはモモのおかげだ。モモみたいな子が羨ましくて。萌をそんな風に幸せにしたくて」

「じゃああさぎくんと一緒にいられる子は幸せだよ。私もこんなに幸せだもん」

あさぎくんが痛いくらいに力を込めて私を抱きしめる。

「どうして君はいつも俺を癒してくれるんだろうな」

「癒してる? 私」

「うん。だってモモの言葉はいつも嘘がないから。……信じられる」

耳に頬に目尻に、たくさんのキス。

「本当に俺を好き? モモ。俺を信じてくれる?」

「うん」

「モモ……モモ」

あさぎくんは私の名前をたくさん呼んで何度も唇にキスを落とした。
唇を舌でなぞられて、私はドキドキしすぎて頭がぼーっとしてくる。
彼の胸にしがみついて、外見よりもずっと男っぽい胸の固さになおドキドキして。触れられるところすべてに敏感に反応してしまう。

「モモとなら……変われる気がする」

「あさぎくん」

「触ってもいい?」

その意味を分からないほど私は子供でもなくて。
小さく頷いて、「あ、でもシャワーも浴びてないんだった」と焦る。

「そのままで、十分」

あさぎくんの声には麻薬成分でもあるんじゃないかな。
ひと眠りしたから眠くなんかないのに、ぼうっとしてしまう。

お姫様みたいに抱き上げられてベッドに運ばれる。
うわ、でも私、初めてだ。
大丈夫かな。

でもあさぎくんも……、だよね?
前はダメだったって言ってたもん。
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