王子様と野獣


目を開けたとき、飛び込んできたのはあさぎくんの鎖骨。

「わわっ」

頭に血が上ってすぐ離れようとしたけれど、裸の私は、同じく裸の彼にしっかりと抱きしめられていた。
腰がなんとなく重たいのは、あさぎくんの腕がのっていたからなんだな。

「ん……?」

私がもぞもぞと動くから、彼も意識が覚醒したようだ。
目を開けて、私を見て一瞬息を吸い込む。そしてお互い裸なことに気づくと、一気に頬を赤く染めた。

「おは……よう、モモちゃん」

「あさぎくん、おはよう」

恥ずかしかったはずなのに、あさぎくんのほうが照れるから、なんだか吹っ飛んでしまった。

「あ、体、大丈夫? 痛くない」

「うん。……あさぎくんは?」

手を伸ばして髪を触ると、あさぎくんは一瞬はっとしたように息をのんだけれど、やがて私の手の上に自分の手を重ね、こっちの息が止まりそうなほど魅惑的な微笑みを見せた。

「大丈夫。……あんなにこだわって怖がっていたのに、なんか不思議だね。俺が変わるわけでもなかった。なんだかスッキリしたよ」

「あさぎくん」

「あ、でも。相手が誰でもいいわけじゃないからね。モモだから、乗り越えられたんだし」

慌てちゃって。時々あさぎくんってかわいいなぁ。あたふたする感じが、万里に似てる。
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