王子様と野獣
「おじさんの目から見た、百花さんを知りたいです」
「……お、聞いてくれるのか」
「百花、こっちにいらっしゃい」
母に呼ばれ、私と千利と十和が集まる。私は何を言われるやら気が気じゃないんですけど。
「少し放っておいたらいいわ。大丈夫よ。浅黄君のほうがイチくんよりうわてのようだし」
「でも」
だからと言って、私のヒストリーをお父さんの目線から語られるのは引く!
親バカもいい加減にしてほしい。
千利はあきれたように笑った。
「いやでも、親父調子に乗り出してるよ。王子、相槌のタイミングうますぎない?」
「じゃあその間私は金髪の王子様見放題ってことだねー」
十和はこちらを向くことなく、あさぎくんをガン見している。
もう、自由すぎるだろう、この家の住人は。
ああああ、あさぎくんに呆れられたらどうしてくれるんだよー。
だんだんと興奮して楽しそうに話す親ばかな父と、それを穏やかに相槌を打ちながら聞くあさぎくん。
最初は嫌で嫌で仕方がなかった。だけど、三十分を過ぎてもそれが続いていて、だんだん、恥ずかしいだけじゃなくて、切なくもなってきた。
お父さん、私との思い出、そんなにあるんだ。
いつも冷たいこと言って悪かったかなぁ。
そして、あさぎくんがこんなに長い面倒くさい話を、優しい顔で聞くものだから、私はだんだん、胸が熱くなってきた。
「愛されてるわねぇ」
ポソリという、お母さん。
「うん」
「もうこれ、結婚の挨拶じゃダメなわけ?」
「さあ」
さすがに速すぎるんじゃない? 付き合ってまたひと月くらいだもん。
でも、幸せだ。あさぎくんが私の家族を大切にしてくれるから。
優しい顔で、呆れられても仕方ないような父の態度を受け入れてくれるから。