王子様と野獣


「父が小さな店をやっていることもあって、商店街を活気づけるっていう仕事のコンセプトには魅力を感じてるんだ。まだ立ち上げられて半年の部署だし、俺自身が未熟でままならないこともいっぱいあるけど、今回の企画は絶対成功させたい。……モモちゃんにもぜひ協力してほしいんだ」

「はい! 頑張ります! 私も、小さなお店がもつアットホームな雰囲気が大好きなんです」


意気込んでそういうと、ふっとあさぎくんが笑った。


「……なんか、変わらないね、モモちゃん」

「そうですか?」


でもそれって誉め言葉じゃない気がする。
だってあさぎくんの知ってる私って保育園児だし、あの時すごく駄々こねたはずだし。
複雑な気持ちで唇を尖らせる。


「そんな子供っぽいですか?」

「あ、ごめん。そういう意味じゃなくて」


あさぎくんは手を振って弁解しながら、口元を緩ませた。


「……素直だなって思って」


金の髪の合間から覗く柔らかい表情に、胸がキューっとなる。

昔の私のこと、そんな風に思っていてくれたの? 
ああやばい。初恋が再燃しちゃうよ。
だってきっとこれは運命。こんな風に再会して、しかも、ちゃんと覚えていてくれて。
期待するなっていうほうが無理……。

胸をときめかせて彼の金髪を見ていると、あさぎくんは突然思い出したように笑いだした。

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