王子様と野獣


待っていた遠山さんとも合流して、向かったのは会社のビルの向かいにあるカフェだ。


「ここのランチプレートおいしいの」

「男性には量がすくないって不評だけど、私たちにはちょうどいいわよね」


美麗さんと遠山さんはこれまでも何度もふたりでランチをしているらしい。
注文して、ドリンクだけを先にもらって四人掛けの席に着く。


「さて、改めて、土地開発部門へようこそ!」


遠山さんが仕切り、アイスコーヒーで乾杯する。


「いやー、私はこの部署を去るのが本当に惜しくなってきました。なんていうの、目の離せない展開だよね! 今」


浮かれ調子の遠山さん。
え? 美麗さんを前にそんなこと言っちゃうんだ?


「遠山さん、有能だから惜しいです。本当はやめないでほしい。週末婚にして、平日こっちにいればいいじゃないですか」

「そういうわけにいかないよー。でももし破局したら、美麗ちゃんもう一度雇ってね」

「私にそんな権限ありません」


遠山さんと美麗さんの会話は黙って聞いているとおもしろい。
遠山さんに対しては敵意がないからか、美麗さんも口調がきついだけのツンデレのようにも見えるし。


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