王子様と野獣


「あの、……ちょっと聞いてもいいですか? 主任と阿賀野さんと瀬川さんが同期っていうのは本当ですか?」


田中本部長がポロリと言っていたことが、私は気になっていた。

そもそもこの部署、若い人ばかりだなぁっていう印象だったんだけど、たしか阿賀野さんは自己紹介のときに二十七歳って言っていたはず。あさぎくんと私ってそこまで歳が離れていなかった気がするんだよね。だからなんかずっと違和感があった。

遠山さんと美麗さんは顔を見合わせて、美麗さんのほうが口を開いた。


「本当よ。うちの部署で一番年上なのは阿賀野さんなんだけど、あの人、大学卒業後、バックパッカーとして数年ふらついていたからまだ入社三年目なの。馬場主任と瀬川さんも同期入社で三年目」

「三年目で主任さんってすごくないですか?」

「異例出世よ。城治さ……田中本部長が抜擢したの。馬場主任は大学在学中からアルバイトでうちの会社に出入りしていたから、その有能ぶりは知られていたしねぇ」

「本部長、馬場主任、お気に入りだもんねぇ」


うっとりしたように美麗さんが言い、遠山さんが茶々を入れ始める。


「そうよ。馬場主任にはみんな期待してるの。穏やかな物腰と冷静な判断。目立つ容貌なのに控えめな態度で、顧客からの印象もいいわ」

「えーそうかな。たまに金髪なのつっかかられてるじゃない」

「そんなの最初だけでしょう? 話してみればわかりますよね。彼、中身は生粋の日本人です。むしろ控えめすぎるくらい」


< 36 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop