王子様と野獣
ものすごく必死に遠山さんに食って掛かっていく美麗さんに、私の胸がチクリと痛む。
過去にたった一日会った私とは違う。美麗さんは本当にあさぎくんのこと、分かってるんだ。
そこでウェイトレスさんがランチプレートを持ってきた。
ドリアとサラダのセットだ。サイズもちょうどよくてクリームソースが濃厚でおいしい。
まあ見合ったお値段もするから、毎日だと金欠の私にはつらいけど。
食べ物が来て、しばらくは静かにみんな食べ始める。
やがて、美麗さんが言いにくそうに口を開いた。
「それより、あなたと主任とどういう関係なの?」
「関係とは?」
敢えてすっとぼけて聞き返すと、美麗さんは顔をさっと赤く染める。
「だから、その。……気になるのよ。男女としてどうなのってこと!」
だよね。あさぎくんが私のこと『モモちゃん』って呼んでから彼女の態度が冷たくなったんだもん。相当気にしているんだよねぇ。
すでに遠山さんには話しているので、彼女を刺激しないように簡潔にまとめる。
「父親同士が昔同僚で。その関係で子供のときに会ったことがあるだけです。すみません。さっきは懐かしがって馴れ馴れしく……」
「それっていつの話よ」
「私が保育園で、主任は……よくわかりませんが小学生だったと思います」
「なんだ。子供の頃の話なのね」
そうしてまじまじと私を見始める。
うわーなんか、そういうときの目つきは怖いよう。