王子様と野獣
「そうよね。こんなちんちく……小さな子。……つまり、主任はあなたを子供のようにかわいがっているということでいいのね。それならわかるわ」
それなら……ってどういう意味だ。
つーか、ちんちくりんって言おうとしたよねー。そりゃ、美麗さんに比べれば全然子供みたいだけど、それはないんじゃないの。
じとっとした目で見つめると、美麗さんは居心地悪そうに咳ばらいをした。
そんなきまり悪い表情でさえ綺麗で、むっとした気持ちもしぼんできてしまう。
「……馬場主任、格好いいですよね。小さな時も格好良かったんですけど、キラキラしすぎててビックリしちゃいました」
昔のあさぎくんを思い出しながらほう……とため息をつくと、美麗さんはコホンとわざとらしい咳ばらいをしてくる。
「そ、そんなに格好良かったの? ……その、小さなときも」
「王子様が来たんだって思ったんです、私。金髪でキラキラしていて優しくて」
「そう……そうなの。分かるわ。素敵だったんでしょうね」
語り合う私たちを見て、遠山さんが大笑いし始めた。
「何よ、遠山さん」
「どうしたんですか。いきなり」
「い、いや。案外いいコンビになりそうだねぇって思って。もっとドロドロするかと思っていたけど」
お腹を抱えながらそう言われて、なんだか恥ずかしくなってちらりと美麗さんを見ると、彼女は彼女で私のほうを見ながら、微妙な顔をしていた。
「わ、私はなあなあにするつもりはありませんからね。仕事はちゃんとしてもらわないと。遠山さんも、退職までこの人を使えるようにしてくださいな!」
「もちろんよ、美麗ちゃん。仲道さん……いや、百花ちゃんって呼ぼうか。仕事に関してはスパルタでいくから」
「はい。よろしくお願いします!」
美麗さんと遠山さん、どちらも今まで私の傍にはいなかったタイプだけど、なんだか仲良くなれそうな気もする。
うん。最初っから波乱万丈だけど、職場の雰囲気は、なかなかにいいのかもしれない。