王子様と野獣


電車から吐き出されるように出て、出勤すると、あさぎくんと遠山さんが盛り上がっていて、やがてみんなが揃うとあさぎくんは全員を集めて言った。


「もしみんなの都合がつくなら、仲道さんの歓迎会をしたいと思ってるんだけどどうかな」


来週には遠山さんの送別会がある。その時に一緒でも……という話も出てはいたんだけど、遠山さんが「それとは別に百花ちゃんと飲みたいよー」って言ったことから急に話はまとまったのだ。


「じゃあ、俺、店予約しようか。何人?」


瀬川さんも積極的に動いてくれて、あっという間に話はまとまった。


「やったやった! 楽しみだねぇ、百花ちゃん」


喜んでくれる遠山さんには悪いけど、何気に金欠なのがつらい……。
でも私の歓迎会っていうなら断るわけにもいかないしね。

そんなわけで、夜の十八時半にはみんな揃って会社を出て、御用達だという駅前の店に入った。
部のメンツが若いからか、アジアン料理のおしゃれでにぎやかなお店だ。
南国を思わせる装飾が柱の高い部分に施されていて、リゾートにでも来たようなリラックス感がある。


「百花ちゃん、辛いの平気?」

「えっと、あんまり?」

「えー。私は好きなんだよね。じゃあ瀬川くん、辛いのと辛くないのとテキトーに頼んでよ」

「はいはい」


仕事ではみんなのサポートにプライドもっている遠山さんも、飲み屋に来ちゃうとその役目は放棄するらしい。
こまごまと世話を焼くのは瀬川さんだ。
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