王子様と野獣


「わ、私、やりますよ」と申し出たら、「いいよ。今日主役じゃん」と瀬川さんにたしなめられた。


「さあ、飲めよー。酔わせてやるー」


なぜか私に飲ませることに執念を燃やす阿賀野さんに捕まり、ピッチャーから注がれるビールを喉奥に押し込んだ。


「あら、いける口ね、仲道さん」


あさぎくんの隣に座った美麗さんが、私の飲みっぷりを見て口を挟んできた。


「や、飲めますけど。普段、量はあまり量飲まないので」

「いや、今日は付き合え。俺の酒が飲めないとは言わせないぞ」


私が逃げないように肩を抱き、もう片方の手でピッチャーを持って待機している阿賀野さんに、呆れたようにあさぎくんが割って入り、軽く頭を小突いた。


「阿賀野、それ、セクハラ」

「いてー、何すんだよ、馬場っ」

「仲道さん嫌がってるだろ」

「嫌よ嫌よも好きのうちだろ? なぁ」

「え、いえ」


そんなわけないじゃん。嫌なもんは嫌だよ。
飲み会は飲みよりは食事派です。


「阿賀野は女の子に対する態度を改めたほうがいいよ」

「女だからとか差別すんの今どきじゃないじゃん。男女平等だろ!」

「差別じゃなくて区別しろって言ってるんだよ。事実として女の子は力も弱いし小柄だし、男から威圧的にこられたら恐怖を感じるもんだろ」

「こいつなら大丈夫だろー、俺を投げ飛ばすくらいなんだから!」


阿賀野さんの中では私はゴリラかなんかに属してるんだろうか。
投げ飛ばしたのは事実なので反論も出来ずに黙っているけれど、女の子に対して失礼だよね。
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