王子様と野獣



「ねぇー。二次会行こうよう!」


遠山さんのはしゃいだ声が、私の頭の中でぐるぐる反響している。
なんか、かなり酔っ払ってしまったかもしれない。まっすぐ歩けている気がしないもん。
思えばいつもはそんなに飲むほうじゃないのに、今日は阿賀野さんに飲まされたもんなぁ。


「ごめんなさい。私はそろそろ……」

「えー。百花ちゃん、帰っちゃうの?」

「金欠で……。ていうか、結構酔っ払ってて」

「確かにちょっと顔色が悪いわ。遠山さん、また来週もあるんですから次回にしましょう」


美麗さんが鋭い現状把握能力を発揮してくれたおかげで、二次会については行きたい人だけという形になりそうだった。


「では私は……」と歩き出したところで、瀬川さんが追ってくる。


「大丈夫? 送ろうか」

「いえ、大丈夫ですー」


笑顔でお断りをする。
瀬川さんは優しくていい人だなって思うけど、もしも彼が私に好意を持ってくれているなら、安易に受け取るのは失礼な気がするんだもん。


「でもふらついてるし」


歩き出した私の体を守るように、すぐ横を歩かれて困ってしまう。
うん。ありがたいけど、やっぱり距離が近いというか……、瀬川さんはいい人だなって思うんだけど、なんか抵抗がある。

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