王子様と野獣
「ホントに大丈……」
「瀬川。俺、仲道さんと同じ電車だから、俺が送っていくよ」
私が答える前に、後ろからあさぎくんの声が割って入った。
ドキリとしたし嬉しかったけど、その奥に傷ついたような顔をしている美麗さんが見えて、胸がズキッと痛む。
私の隣にいた瀬川さんはため息をついて、「お前は、二次会行けばいいじゃん」と肩をすくめる。
「そうですよ。主任、遠山さんとももうじきお別れですし、行きましょう?」
「来週もあるしね。今日は帰るよ」
すがるように美麗さんが言っても、あさぎくんは笑顔で交わしていく。
酔っ払ってはいるものの、気まずい空気に耐え切れなくなって、私は明るい声で言った。
「あ、あの、ふたりとも。大丈夫ですよっ、私」
とはいえ、頭がぐるぐるしちゃう。これ以上立っているのもしんどいし、何でもいいからもう早く帰りたい。
「……モモ?」
その時、後ろから私を呼ぶ声がした。これは千利の声じゃない?
「千利?」
千利は大学の仲間と思しく数人と駅に向かって歩いていた。
「やっぱ、モモだ。なんだ、そっちも飲み会? もう終わり? じゃあ一緒に帰る?」
「あ、……うん」
大学生はまだまだこれからだろうに、私の酔っ払った様子を見て取った千利は友達に事情を説明して別れると、私のすぐ後ろまでやって来た。あさぎくんの金髪を見て、少しだけ眉を寄せる。