王子様と野獣
*
モヤモヤした気持ちのまま家に帰ってきた私は、今改めて携帯電話の番号とにらめっこしている。
瀬川さんの番号は、一応メモリーに入れてそのままになっている。今見ているのは、あさぎくんの方。
昼間のあさぎくんと専務の会話が気になって、どうしようもない気分になってる。
でもそんな私用であさぎくんに電話してもいいものか。
そもそもなんといって切り出せばよいのか。
気が付けば、悩み続けて三十分。
「……やっぱりやめよう。それより勉強勉強!」
気を取り直してあさぎくんに借りたノートパソコンを起動する。
起動するまでに時間がかかるので、しばらく放っておいたら、画面にエラーメッセージが出ているではないか。
「えっ? なにこれ。えっと。セキュリティライセンスの有効期限……?」
以前使っていたものだって言ってたから、セキュリティソフトの更新をしていないんだ。
えっと、これ大丈夫なのかな。放っておいても。
思いがけず、電話する理由ができてホッとしている自分がいる。
自分から電話番号を教えてくれたんだから、嫌がりはしないはず。
だよね、だよね?
言い聞かせるように心の中でつぶやいた後、思い切って発信ボタンを押した。
たった数秒の待ち時間がすごく長くて、やっぱり切っちゃおうかと思ったタイミングで耳もとの音が変わった。
『……はい、馬場です』
予想より、いぶかし気な低い声だったから、私はビビってしまった。どもりながら切りたい衝動と戦いつつ、いやいやそんなの失礼だよと思い直して名乗る。
モヤモヤした気持ちのまま家に帰ってきた私は、今改めて携帯電話の番号とにらめっこしている。
瀬川さんの番号は、一応メモリーに入れてそのままになっている。今見ているのは、あさぎくんの方。
昼間のあさぎくんと専務の会話が気になって、どうしようもない気分になってる。
でもそんな私用であさぎくんに電話してもいいものか。
そもそもなんといって切り出せばよいのか。
気が付けば、悩み続けて三十分。
「……やっぱりやめよう。それより勉強勉強!」
気を取り直してあさぎくんに借りたノートパソコンを起動する。
起動するまでに時間がかかるので、しばらく放っておいたら、画面にエラーメッセージが出ているではないか。
「えっ? なにこれ。えっと。セキュリティライセンスの有効期限……?」
以前使っていたものだって言ってたから、セキュリティソフトの更新をしていないんだ。
えっと、これ大丈夫なのかな。放っておいても。
思いがけず、電話する理由ができてホッとしている自分がいる。
自分から電話番号を教えてくれたんだから、嫌がりはしないはず。
だよね、だよね?
言い聞かせるように心の中でつぶやいた後、思い切って発信ボタンを押した。
たった数秒の待ち時間がすごく長くて、やっぱり切っちゃおうかと思ったタイミングで耳もとの音が変わった。
『……はい、馬場です』
予想より、いぶかし気な低い声だったから、私はビビってしまった。どもりながら切りたい衝動と戦いつつ、いやいやそんなの失礼だよと思い直して名乗る。