王子様と野獣

強い力に引きずられるように歩く私。


「おい、馬場。ずるいぞ、抜け駆け」


瀬川さんの心配そうな視線が、突き刺さる。あさぎくんは瀬川さんを振り返ると、「心配しなくても送り狼になんてならない。親御さんへの責任もあるし、きちんと送っていくから」とあっさりと言う。


ちょっと待って。
今の流れだと、私に気がある人は私を送っちゃダメなんでしょ?
つまりあさぎくんが自分が適任って言う意味は、私のことは完全に対象外ってこと?


「あの、主任……」

「電車の時間大丈夫かな。仲道さん、酔ってない? 少し急いでも平気かな」

「はい……、だ、大丈夫です」


美麗さん、あなたの直感は間違っているかもしれない。
あさぎくんは何の下心もなく、私をきちんとアパートまで届けるつもりのようですよ。


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