王子様と野獣
「でもそれって、病気とかじゃ……」
「体は問題ないらしい。……精神的なものじゃないかと医者は言うんだ。思い当たる節はあるし、……それが原因ならきっと一生治らない。だから」
あさぎくんは私の腕から手を離した。そして、悲しそうに笑う。
「……だから俺は、誰とも結婚しないし、付き合わない」
「あさぎくん待って」
「ごめんね、モモちゃん」
あさぎくんが走って行ってしまって、私はそれを見送るしかなかった。
力が抜けて、地面にへたり込む。
彼の告げた理由は、あまりにも意外過ぎて。
だから、美麗さんとの政略結婚も断ったの?
でも彼女にはそこまで具体的なことは話してないんでしょう?
なのに私にはどうして話すの?
頭の中がぐるぐる回る。いつの間にかあさぎくんの姿が見えなくなっていたことも気づかずに、私は「どうして……?」と繰り返していた。