王子様と野獣
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昼休憩、私と美麗さんは駅前のカフェに向かってでランチを食べている。
「実は私、美麗さんに報告があるんです」
「なによ。まさか主任と付き合いだしたとか言わないわよね」
「逆です。振られてしまいました」
その瞬間、美麗さんが水を軽く噴出しむせる。
「げほっ、ちょ、それ、どういうこと」
ああ、服が少し濡れてしまったな。乾くといいけど。
涙目でじっとり見つめてくる彼女に、罪人が手口を告白するような気持ちで打ち明ける。
「あの後、アパートまで送ってもらって……なんか、昔の話とかしていたら気やすい気分になってきちゃって。黙っていられなくなって告白しちゃったんですよ。でも、やっぱり、誰とも付き合う気はないんですって」
「そうなの? ……あなたに対しては態度違うなって思っていたのに」
「主任にとっては私も美麗さんもおんなじみたいですよ。……でもね、美麗さん。私、それでもあきらめられないんです。だから、主任に心を開いてもらえるように頑張ろうと思って」
「え?」
美麗さんは驚きに満ちた顔で私を見返した。
「え、だって、振られたんでしょ」
「はい。でも嫌いじゃないって。だったら可能性あるかもしれないし。私、……主任がいつも無理して笑っているような気がするんですよ。もっと彼の心に近づきたい。だから、まだ諦めないつもりなんです。絶対に主任を落として見せます」
呆気にとられつつも、美麗さんは探るように私を見る。