アッファシナンテ
明日から、またその壁が
目の前に現れるのならそれでもいい。
今、目の前にいる人を大切にしたい。
勇気を出し息を切らしながら
険しい壁を登ってきてくれたお嬢様が
愛おしくて堪らないのだ。
上着を脱ぎ捨てベッドに入ると
お嬢様の体温が伝わる。
憂いを帯びたその表情が
恐ろしいほどに美しい。
その白い肌が気持ちを加速させる。
止められなかった。
もう後戻りなど出来ない。
遠慮なんてしない。
病気と戦う彼の気持ちを
考える余裕などない。
その日、お嬢様と初めて1つになった。
踏み出したと思っていたけれど
まだ1歩も踏み出しては
いない事を知った。
踏み出したんだ、今日。
はじめの一歩を。