人魚のいた朝に
「青一にも、もう会えへんと思っとたから」
「初空」
「また会えて良かった」
そう言って、太陽みたいに笑った初空の頬を、涙がポロポロ流れ落ちた。
ずっと好きだった。初めて会ったあの日から、たった一人の特別な女の子だ。
大好きで大好きで、いつもその背中を追いかけていた。
“二人合わせたら、「青い空」だね”
“あおい、そら?”
“うん!ずーっとずっと、あの海の先まで一緒ってこと”
まだ知り合って間もない僕に、彼女は無邪気に笑いながらそう言ってくれた。その笑顔に、その優しさに、その存在の全てに、僕は一瞬で恋に落ちた。
だからいつか、何年先になるかはわからないけれど・・・
「青一?」
「初空」
僕が大人になって、沢山のことを学んで、今よりも優れた人間になれた時には、
「あおい?急にどうしたの?」
持てる時間と努力の全てを、君の為に捧げよう。
君の願いを叶える魔法があるのなら、僕は生涯をかけてそれを手に入れよう。
例えそれが、君との距離を広げることになったとしても。
「僕は初空が、大好きだ」
誰も居ない砂浜で、僕は初めて彼女を抱きしめた。