俺にすればいいのに。
「わあ! 優くん見て! すごく綺麗だよ」

「本当ですね! あ、先輩。あっちにクラゲがいるみたいですよ」

「クラゲ!? 行こ行こ!」


先輩は俺の腕を引っ張って、クラゲのいるブースに向かった。


「クラゲだ〜!」

「好きなんですね」

「好きだよ〜。綺麗だし癒されるじゃん」


目をキラキラさせてクラゲを見ている先輩。

気づけば俺はそんな先輩の横顔に見惚れていた。


「……どうしたの?」

「え? いや、別に」

「もう! 私に見惚れてたんでしょ〜? 私よりもクラゲを見なさい!」

「見惚れてなんかないですよ!」

「嘘つき〜。顔が真っ赤だぞ〜?」


なんだよ。
今まで余裕なんてなかったくせに。


ニヤニヤして俺を見る先輩にちょっとだけムカついた。

……いや、図星を突かれた自分自身にムカついてるだけだ。



俺は無言で強引に先輩の手をとって歩いた。


「ゆ、優くん?」

「ムカつきました」

「え? ご、ごめん」

「だからイルカのショーを見に行きます」

「う、うん…?」


先輩は不思議そうに首をかしげる。


「イルカが好きなだけです。悪いですか?」

「イ、イルカって可愛いよね」

「先輩の方が可愛いです」

「な、なんでそうなるの!?」

「あれ? 先輩、顔が真っ赤ですよ?」

「優くんのバカ!」

「さっきの仕返しです」


今日の先輩はいつもより子どもっぽい。
表情がころころと変わるから見てて楽しい。
……なんて、先輩に言ったら怒るかな?


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