俺にすればいいのに。
「俺、ですか?」

「はい。ステラ先生、ですよね?」

「え……」


『ステラ』とは、『うさぎのミルちゃん』の作者であり、SNSで話題の絵師。

彼女たちの言う通り、まあ俺は『ステラ』なんだけど……


「どうして…」

「店員さんたちが噂していたのを耳にしたんです」

「……はあ」

「サインをいただけませんか?」


まだYESって言ってないんだけどなぁ。


「すみません。今はプライベートの時間なので……」

「そう、ですよね。無理を言ってすみませんでした」


あからさまに悲しそうな顔しないでください。
心が痛くなるから。


「もしよろしければ、握手なら…」

「本当ですか!? ありがとうございます!」


切り替えが早い。

……先輩に見られてないよな?

限定ショップの方へ目を向けると、楽しそうにグッズを見ている先輩がいた。

今は俺よりもミルちゃん、か……

自分のキャラクターに嫉妬するとか恥ずかしい。


「これからも応援しています!」

「ありがとうございます」


握手をした彼女とその友達は笑顔で去って行った。
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