俺にすればいいのに。
「先輩」


顔を埋めていた先輩が俺を見上げる。


「あそこのベンチに座りませんか?」

「うん」


ベンチに座って改めて目の前の景色を眺める。


「綺麗だね」

「先輩の方がもっと綺麗です」

「その手には乗らないぞ〜?」

「本当のことなんですけどね……あ、渡したいものがあるんです」

「渡したいもの?」

「どうぞ」


水族館で買った お揃いのクラゲのストラップ。
先輩は「可愛い! ありがとう!」と嬉しそうに笑った。

そんな先輩の横顔を見ながら、別れの時間が近づいていることに寂しさを感じていた。


時間はあっという間に過ぎていき、さわやかな風が優しく頬を撫でた。

もうこれ以上、我慢できない……


先輩の右肩に手を回すと、先輩は驚いた表情で俺を見た。それを無視して、左手で先輩の顎を下から軽く上向きにする。
そのままゆっくりと唇を重ねた。


顔をはなして先輩を抱き寄せる。


「優、くん?」

「先輩、ごめん」


俺は先輩の肩に顔を埋めながら、泣きそうになるのをこらえた。


「あと2年、早く生まれていたら……先輩と一緒にいられたのに」


先輩は何も言わずに、俺の頭を優しく撫でた。

やっぱり俺の方が年下で、どんなに強がっても意味がないんだ。


「もう少し、このままでいさせて」

「うん」


今だけ、こんなかっこ悪い俺を許して……
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