俺にすればいいのに。
「優くん、落ち着いた?」

「はい」

「よかった〜」

「あ! あれをみてください!」

「え? どこ?」


俺が指差した方を見る先輩の頬にキスをした。


「騙したな!?」

「先輩が可愛かったので、つい…」


先輩はムッとした表情で立ち上がって俺の前に立つと、ベンチの背に手を置いた。


「美さっ…」


名前を呼び終わる前に、俺は唇をふさがれた。


「仕返し。私だって、これくらいできるんだからね!」

「そうですね。先輩の方が俺より余裕がありそうですから」

「……そんなことないよ」


先輩の頬を涙が濡らしていく。

強がってた先輩はどこに?


「私だって、優くんと離れたくないよ。やっと付き合えたんだもん。ずっとこのままがいい……」

「先輩、泣かないでください。俺は先輩の涙なんて見たくないです」


そう言って優しく指で涙を拭ってあげた。


「優くんだって、泣いてるじゃん」

「誰のせいだと思ってるんですか」

「優くんって涙もろいんだね。意外だな〜」

「うるさいです…」


拗ねたふりをして横を向く。

チラッと先輩を見ると、ふっと息を漏らして口元に手を添えていた。


「あ、笑った。やっぱり笑顔の先輩の方が好きです」


俺がそう言うと、頬を染めた先輩は顔を背けて「やっぱり、ずるい」と呟いた。
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