俺にすればいいのに。
「ここまででいいよ」

「大丈夫ですか?」

「うん」

「本当に?」

「心配性だなぁ」

「……先輩と、まだ一緒にいたいだけです」


絶対、顔赤いだろうな。
こんな顔、先輩に見られたくない。


「私も同じ気持ちなんだけど…門限があるから、ごめんね」

「じゃあ、最後に抱きしめてもいいですか?」

「いつでもおいで!」


両手を広げた先輩の背中に手を回して優しく抱きしめた。

あたたかな体温が伝わってきて、泣きそうになる。


「まーた、泣きそうになってるでしょ?」


図星を突かれて力が入る。


「永遠の別れじゃないんだから。そんなに心配しなくて大丈夫だよ」

「うん」


結局最後は先輩に甘えてしまうのか。

なんか、悔しい。


「優くんは十分かっこいいよ。だから、私の前では強がらないで、ありのままの優くんでいてほしいな」

「先輩には、全部お見通しなんですね」

「だって、わかりやすいんだもん」

「そういうところばっかり……」

「何か言った?」

「いいえ、何も」


抱きしめる力を緩めて、ゆっくりとはなれた。
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