俺にすればいいのに。
「おやすみなさい、先輩」

「名前で呼んでよ」

「嫌です。緊張するので」

「えー!」

「ぎゅーってしてくれたら、いいですよ」

「……これでいい?」

「ばっちりです」


先輩の指と自分の指を軽く絡ませて耳元でそっと囁く。


「またね。美咲…先輩」

「優くん、ずるい!」

「名前で呼びましたよ?」

「次会った時は呼び捨てで呼んでよね!」

「はい」

「言ったからね!?」

「わかりましたよ。先輩、そろそろ時間…」

「あ、ほんとだ!」


あんなに離れたくなかったのに、こんなにあっさりした別れ方はどうなんだ……


「バイバイ、優くん!」

「はい。家に着くまでがデート、ですからね?」

「なにそれ〜! 遠足じゃないんだから」


笑いながら手を振る先輩を、見えなくなるまで見送った。
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