花瓶─狂気の恋─

そして泰河の後ろでひょこっと顔をのぞかせていた悠雅が真帆と目が合うと、気まづそうな顔をしながらニコッと笑って小さく手を振った。


真帆は意外な訪問者にブワッと鳥肌が立つが、すぐにでも行きたい気持ちを抑え、晶子に続いて目を合わせず、ゆっくりと向かった。


「どうしたの?教室に来るなんて。」


「いや、別に大した用じゃないんだが....あ、その子が真帆ちゃん?俺は晶子の彼氏で悠雅の親友の渡井 泰河だ。よろしくね。」


「...はい。よろしくお願いします。」


真帆はいつもより少しトーンを下げて軽くお辞儀をする。
その素っ気ない態度に泰河は少し動揺していた。


「あ、泰河君、なんか用事あるの?なんの用?」


「え?あ、ああ。俺はただ単に晶子に会いたいな〜って思っただけど、悠雅は真帆ちゃんに用があるって。」


「え?先輩が?」


真帆は普通に嬉しくて元のトーンに戻りかけてしまった。真帆は心の内では慌てたが、表では冷静を演じ、ずっと見つめ合っていたい悠雅の目線をスっと逸らした。

悠雅は真帆の反応に顔を曇らせるが、真帆に声をかけた。


「真帆ちゃん....ちょっと屋上に来てくれるかな?二人で話があるんだ。」


「.......分かりました。」
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