花瓶─狂気の恋─
この豚馬鹿なの?なんでそんな穴だらけな脅しをするわけ?説得力ないし、どうせ出来ないでしょ?だって"イジメ"で止まってんだから。まぁ、本当に来たとしても逆に殺すからいいんだけどね〜。
そんな余裕がある真帆の内心を知らない麻紀は鼻歌を歌いながら、清掃用具入れからモップと小汚い雑巾を取り出した。
「まぁ今日はいい気分だからね〜。今日はこれくらいで勘弁してあげるよ。もう二度と悠雅さんに近寄んじゃねぇぞ!!」
麻紀はモップで真帆を殴った。頭の上から殴られた衝撃で目がチカチカした。キーンと耳鳴りが聞こえ、手に力が入らなくなり付けたくもない汚いタイル床に頭を預けた。
「麻紀容赦ないな〜死んじゃったんじゃない?」
「死んでも別に良くね?むしろ地球が綺麗になるから社会貢献じゃん。」
凛と麻紀が楽しそうに話していると、廊下の様子を少し見に行った鶴が駆け足で戻ってきた。
「麻紀、そこの廊下に悠雅さんがいるけど....」
「え!?マジで!?速攻行くわ!」
そう言って麻紀はモップを捨てて、女子トイレを飛び出して行った。鶴と凛はトイレの出口に顔を出して、その様子を伺っていた。
真帆はぼんやりとした意識の中、鶴のカバンからスマホが出ているのを確認した。
真帆は気付かれないよう、ある限りの力を出してそのカバンまで歩き、スマホをスっと抜き取った。