花瓶─狂気の恋─
そこからまた同じ場所に戻る、しんどい作業だった。だが、真帆には耐えられる理由があった。それは麻紀が悠雅に声をかけているというだけで怒りが沸き起こり、それを原動力として変えていたからだった。
あの豚!私の悠雅先輩に手を出すなんて百年早いんだよ!殺してやる!絶対に殺してやる!悠雅先輩に近付いた事を後悔するくらいに惨めにしてやる!
真帆は涙を流しながら元の所へ戻り、力無く倒れた。すると、麻紀が上機嫌で戻ってきて、目の前に雑巾を投げ渡された。
「これでその汚い身体拭いとけば?これから私、悠雅さんと一緒に帰るから〜。ばっはは〜い。」
それだけ言い残し、三人は女子トイレから去っていった。数十秒後、真帆は溜め息を吐きながら鶴のスマホを操作する。
本来ならもっと違う形で取るはずだったが、これは運が良かった。そしてスマホを取った次の日を決行日に指定している。
まるで神様が早くしろと言わんばかりの奇跡、真帆はニヤッと口角を上げて鼻で笑った。
そして操作をしていると意外な事に真帆は驚いた。これまた偶然、それに好都合。
鶴はある動画配信サイトの配信者で中々の人気を誇っていたゲーム実況者だった。
更に色々と探ってみると、SNSも専用アカウントを作っていたのも分かった。