花瓶─狂気の恋─
────────────────────
凛の泣き声は女子トイレだけには留まらず、別館の廊下にも響いていた。朝早くとはいえ別館にも教師がいた為、駆けつけた教師が狂うように真帆を蹴っていた麻紀を直ぐに取り押さえた。
朝早くからの生配信、見れる人は多くはなかったが情報が広がるのは凄い速さだった。数十分後、着ていた制服で学校は特定され、職員室に電話の嵐がやってきた。
麻紀達三人は直ぐに別室の教室へ移動され、真帆は学校に呼び出された母親に連れられて帰宅した。
真帆は凄く弱っている演技をし続け、母親の質問には一切答えず黙って部屋に籠っていた。
カーテンを閉め、電気がついていない暗い部屋で真帆はクスクスと笑っていた。
あの豚....凄い焦ってたな〜。馬鹿みたいに蹴るしか出来ないあの姿...思い出すだけで滑稽で笑えるんだけど。
時間が経っても鮮明に思い出される光景を一人で楽しんでいると、スマホから着信音が聞こえる。誰からなのかは分かりきっていたが一応画面を見てみると案の定、雫からだった。
「もしもし雫?」
「ライブで見させてもらったわ。本当に運が良かったわね。イジメグループに有名人がいて生放送、イジメを世間に広める方法としては理想的ね。」
「そうでしょ?それに加えて私の名演技!ネットを見ても誰も疑う様子はない。完璧よ。」