花瓶─狂気の恋─
凛は反射的に逃れるように倒れ、投げられた物も部屋の中に入った。この異常な行動に凛は震えが止まらなかった。
な、何?何なのこれ!?も、もう住所が特定されちゃったの!?なんの嫌がらせ!?
凛は恐る恐る投げ入れられた白い玉のような物を手にした。
手にしてみて、それは紙を石に丸めただけだと分かった。凛は紙を剥がしてそこに書いてあった文章を見た。
『これからこの紙を持って大和通りのカフェ「緑屋」に来て。話したいことがあるし、謝罪もしたい。麻紀より。』
「麻紀....メッセージでいいのに...」
凛は別れ際、麻紀がグシャグシャに泣きながら帰っていくのを見ていた。何かとプライドが高い彼女が大泣きし、そして詫びを入れたいと言っている。凛は行く他なかった。
素直に外出してくると言ってもどうせ大声で怒鳴られるのは目に見えていた。
見つからないように玄関へ向かい、そっとドアを開けて家を出た。
大和通りまではあまり時間はかからないが、凛は周りの目が気になり、顔を隠すように走った。
普段より少し遅れ気味で凛はカフェ「緑屋」へ着いた。入り口付近には麻紀の姿が見えないので、中へ入ろうとした時誰かに腕を掴まれた。
咄嗟に手を引いて掴んできた方を見ると、小さいリュックを背負っている真帆がいた。
「え?....真帆?」