花瓶─狂気の恋─


凛の問いに真帆はぺこりと小さくお辞儀をした。自分達が奈落の底へ落ちる原因、自分達が仕掛けたとはいえ、凛は理不尽な怒りが込み上げた。


「ここで何してんの?あんたとはもう顔も合わせたくないんだけど。」


「あ、あの...麻紀さんが....カフェの中じゃなくて裏通りだから案内しろって言われて...」


真帆がオドオドと言ってくるのでイラッとするが、自分の気持ちを抑えて案内するよう指示した。

真帆はカフェのすぐ横にある狭くて少し暗い道を通っていった。凛はこんな所へ行くことに不信感を持ちつつも、真帆の後を仕方が無く付いていった。

しばらく続く細道を出ると、今度は少し大きい所へ出てきた。だが、そこは行き止まり。言うなれば建物の裏や横で出来た四角形の不良の溜まり場みたいな場所だった。


「へ?何なのここ....麻紀はど」


次の瞬間、真帆はリュックから既に出していた黒い何かを振り向きざまに凛に殴りかかった。

凛はイキナリのことで呆気を取られ、黒い何かを確認できずに両手でその攻撃を止めようとした。
黒い何かはトンカチだった。凛の両手はいとも簡単に弾かれ、鈍い音が建物に囲まれた空間で響くと共に激痛が走った。

「ッ!!いっ...ムグ!」
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