花瓶─狂気の恋─

雫はスっと片手を内側ポケットに入れる。だが、そこに何も無いのに気が付き、舌打ちをすると髪をかきあげた。
晶子は直感的に雫が何かを我慢していると感じた。


「....そんなに面白い事を企んでるわけじゃないわ。私は自分の作る物語をより良くする為、彼女に取材しているだけなの。」


「....取材?犯罪に手を貸すことが取材なの!?ふざけないでよ!」


「ふふふ....何も分かってないわね。真帆の行き着く果てを見るために必要なことだからやること。また...あの感動を味わう為に....」


雫はゆっくりと瞼を閉じた。記憶の引き出しに手をかけ、宝物のようにしまってある大事な記憶の箱を開ける。
当時の記憶が鮮明に浮かび上がり、雫はブルっと身体を震わして不気味に笑う。
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