花瓶─狂気の恋─
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十年前、私はただの女子中学生だった。成績は上々、運動神経は良くも悪くもない、クラス内の存在感は薄く、大した友人関係もいない。
熱中出来るものも何もなく、趣味は読書と軽く自分で小説を書くだけ。帰ったらそれらをするか寝るだけというつまらない人生を送っていた。
そんなある日、下校途中でこの山へ寄ったの。理由は単なる暇つぶし、少し冒険がてらに小説のネタになる物を探そうとして入ったの。この時の私は自分の納得出来る作品を創作出来ずに苛立ちと絶望していた。
何にも専念せず、何も生み出す事も出来ない自分は本当に何も出来ないんだなって。
山の中は今より酷くてね、草木は馬鹿みたいに伸びきって手足に当たる度痒くてしょうがなかった。
臭いも酷いし蜘蛛の糸が頭に巻き付くし本当にうんざりしたわ。そもそも山の中へ入るような格好じゃなかったし仕方がないんだけどね。
私はこんな山が鬱陶しくて嫌気がさしていた。だけど、何故か今すぐ帰ろうとは思えなかったの。死ぬ程嫌なはずなのに足は前へと進んでいく。何か変な引力か予感なのか....今になっても分からないけれど、あの時の私は洗脳されたように奥へと進んでいった。
進んだ先は壁だった。なんの面白みもないただの土の壁、自分の状態が状態だったが為、凄い何かがあると思い込んでいたから相当イラついたわ。